「彼氏とうきうきランチなんだから、もっと楽しそうにしたら?」

「無表情でうきうきとか口にするあんたに言われたくないわ」

 帰り支度をしている冴子に減らず口を返す。


 冴子とて、私と同じで、別に無表情を貫いているわけじゃない。楽しければ笑うし、冗談も言う。感情が顔に出にくいだけだ。クールビューティーか。うまいことを言うなあ。

 ……彼氏といる時って、どんな顔してるんだろう。先週、小早川先生のことを報告された時には無表情でのろけるという荒業を目にしたけれど、デレた冴子はまだ見たことがない。卒業したら、小早川先生に詳しく聞いてみよう。


「早くいかないと、また彼氏がお迎えに来ちゃうわよ」

「そうだ、急がなきゃ。じゃ、私、行くわ」

「また、明日」

 冴子に手を振りながら、急いで後ろのドアを通ろうとした時だった。

「うおっ!」

「きゃ!」

 教室を出ようとした私の前に、何か大きなものがぶつかってきて、私はその場にしりもちをついてしまった。