あの月が丸くなるまで

「こんばんは」

 玄関をあけると、やっぱり上坂が立っていた。

「何やってんの、こんなとこで!?」

「今帰りなんだ」

「帰り? こんな時間までなにやってたのよ? というより、どこの帰りならこんなとこ通るの?」


 高校から徒歩十五分の私の家のまわりは住宅街で、夜中に遊ぶような場所はない。確か上坂の家は榊台だって言ってたから、路線を考えたら渋谷で遊んでその帰りというわけでもないだろう。


「美希と見たかったんだ、あれ」

 笑いながら、上坂は半分の月を指さす。思わず、ぽかんと口を開いてしまった。

「それだけで? ばかじゃないの」

「なんだよ、せっかく逢引きしようと思って会いに来た彼氏に、ばかはないだろ」

「だからってこんな夜中に……」

「だってさ」 

 上坂が、私の顔をのぞきこむ。いつもより近いその距離に、どきりと胸が鳴った。