あの月が丸くなるまで

『な? 見惚れて、窓から落ちるなよ』

「そんなドジじゃないわよ」

『まあ、万が一落ちたら受け止めてあげるから、安心して、かぐや姫。むしろ、俺の胸に落ちてきて』

「何言って……え?」

 笑いながらなにげなく下ろした視界の中で、うちの前の道路に突っ立っている背の高い影に気づく。


「上……坂?」

『よ』

 携帯を持っていない方の手を軽く上げて、上坂が笑った。



「なななな……!」

『し。夜中なんだから、静かに』

 あわてて私は口元を押さえると、通話を切って部屋を飛び出した。早くなった鼓動を押さえながら、極力足音を忍ばせて階段をおりる。大兄だけが起きているみたいだったけど、どうやら気付かれることはなかった。