あの月が丸くなるまで

「もしかして、冴子……もう?」

 言外に、さっきの話の含みをもたせる。だから、私と上坂のことも気にしてたのね。

 すると冴子は、不満そうに目を細めた。

「ううん、まだキスもしてない。普通男って、好きな女には、手、出したくなるもんじゃないのかなあ」

「それは人それぞれだと思うけど……小早川先生ってそんながっついたタイプにも見えないし」

「一度、そういう雰囲気になったときに、なんで何もしないのか聞いてみたんだけどね……したら、『まだだめ』って」

「冴子がまだ生徒だから、ってことだよね。ちゃんとけじめは守る人なんだ、先生」

「そうなのかなあ」

 冴子が小さくため息をついた。

 そっか。いきなりホテル誘われるのも驚くけど、誘われないのもそれはそれで悩みになるのか。