あの月が丸くなるまで

「……一体、何考えてんのよ」

 答えを期待しない問いを呟いて、私は空を見上げた。



 いい天気。あたたかい陽気は、日差しの下なら汗ばむほど。屋上の隅っこ、入口から死角になる日陰のここは、人の気配はしても誰も視界には入ってこない。

 そういえば、こんな風にのんびりと空を見上げるなんて久しぶりだなあ。この体勢に慣れるまでは、緊張して空を見る余裕なんてなかったし。一週間で慣れてしまった自分も怖いけど。



 雲がゆっくり動いていく。少しずつ、形を変えて。

 カオス理論、って以前見た昔の映画の中で、数学論者がそんなようなこと言ってたっけ。

 雲ができる原理はわかっているのに、次にどんな形の雲になるかは予測ができないって話。そこに確かにあるのに、先がわからない……

 私は、規則正しい上坂の寝息に誘われるように、目を閉じた。


  ☆