あの月が丸くなるまで

「何もされてないの?」

 何も言われてない、じゃなくて何もされてない、って聞かれるあたり、なんかすごく怖い。

「今のところは」

「それはそれで、かえって不気味ね」

「このまま何もなく一ヶ月が過ぎてくれれば、それにこしたことはないわ」

 私は、玉ねぎをざくざくと切りながら答えた。うう、目にしみる。



「梶原さん、上手ねえ」

 私の手元を見ながら、竹内さんが感心したように言った。

「うち、私が料理当番なこと多いから」

「へー、慣れてるわけだ。あ、玉ねぎ切れたらちょうだい。私、炒めるから」

「うん、そこに切ってあるジャガイモと人参も一緒にね。あ、長谷部君! 糸コンそんなに煮ちゃだめ!」

「え? もういい?」

「いい、いい。軽く洗ったら、食べやすい長さに切って」

 私は、刻んだ玉ねぎを竹内さんに渡して、まな板と包丁を洗い始めた。