あの月が丸くなるまで

「別に? レストランのコックさんなんて、みんな男の人じゃない。まあ、どうしてもやれとは言わないけど、できることは多いほうが人生お得よ? 上坂って手際よさそうだし、やってみたら意外とうまくできるかもね。たとえ下手でも、愛がこもっていればそれなりに美味しいはずだし」

 上坂の、器用そうな長い指。大きな手は、包丁握っても似合いそう。



 飲み終わった牛乳のパックを手にしたまま、上坂は、じ、と私を見ていた。

「何?」

「うん、美希って……」

 上坂がこつんと私の肩に頭を乗せた。

「……上坂?」

 次の言葉を待っていたら、聞こえてきたのは規則正しい寝息だった。

 あら、寝ちゃった。

 私は、そ、とその寝顔を盗み見る。ふわふわした髪の毛が、耳元にくすぐったい。

 カツサンドを食べ終わった私は、予鈴のチャイムが鳴るまでそのままでいた。