「みーきーちゃーん!」

 三限が終わると、教室の後ろ扉から陽気な声が響いた。私は思い切り顔をしかめたまま、嫌々振り返る。

 案の定、そこで手を振っていたのは上坂だった。



「まあ、王子さまのお迎えよ」

 自分のお弁当を手に私の隣にいた冴子が、棒読みで言った。

「かんべんしてよ……何考えてんの、あのバカ」

 授業が終わったばかりで、まだ教室には生徒がうようよいる。そこへあんなふうに呼ばれたら、中にいた生徒はいっせいに振り返るし、その後こっちへ向けられた女子の視線の痛いことったら。

「何も考えてないんじゃない?」

「……それ、激しく同意」

 おーい、おーい、と手を振る上坂をにらみながら席を立つ。