あの月が丸くなるまで


  ☆


「ねえ、莉奈さん」

「なあに?」

 がちゃがちゃと機嫌よくお皿を洗いながら、莉奈さんが答えた。長い髪が、その手のリズムに合わせて細かく揺れている。

 キッチンには、私と莉奈さんの二人だけだ。

「セックスって気持ちいい?」

 がちゃん!

 ひときわ大きな音がして振り向くと、莉奈さんが泡の中に手を突っ込んだ体勢のまま固まっていた。



「……お茶碗、大丈夫?」

「だ、だいじょ……それより美希ちゃん、今の……」

「やってんでしょ? 拓兄と」

 莉奈さんは、真っ赤になって目を丸くしている。

 あら。

 もう拓兄との付き合いも長いから、こういう話題平気かと思ったけど。

「莉奈さん、こういう話題、苦手?」

「苦手っていうか……いきなり何言い出すのかと思って、ちょっと、びっくりして……何か、あったの?」

「うん。彼氏にやろう、って言われたんだけど、どうなんだろうと思って」