岡崎さんは、たまに上坂と会っているらしい。けれど私は、上坂に当ててメッセージを頼むことはしなかった。向こうから来たこともないから、きっと上坂も同じように考えているんだろう。

 ただ、話のついでに、という振りを装って相手の状況を耳にするだけ。岡崎さんもそのことについては何も言わなかった。


「ま、その方がいいけどね」

「なんで」

「その間に、俺が美希を口説くから」

「橋本研究室の助手」

 とたんに、ぎくりと岡崎さんが肩を揺らすのが分かった。

「な、なんで知ってんだよ?」

「うちの研究室の子が、お友達だったのよ。大変だったみたいね」

 岡崎さんは、うなりながら頭を抱えた。その姿に、少し同情する。