学業もヘアメイクの勉強も、上坂は立派に両立させてきた。けれど、実績を持たない今の状態では、お父様は上坂のことを決して認めてくれない。

 もうすぐ、私は夢に向かって一歩を踏み出す。だから上坂にも、どうしても彼の夢をその手に入れて欲しい。


「誰にも文句のつけられないようなメイクアップアーティストになってみせるから……美希。それまで、待ってて。誰のものにもならないで」

 予想外の言葉に、私は目を見開いた。てっきり待っているのは、さよならだけだと思ってたから。

「……どうせ……」

「ん?」

「きれいな女の人に囲まれてちやほやされたら、きっと私のことなんか忘れちゃうわよ」