き、緊張した……

 噛んだらどうしようとか、階段踏み外したらカッコ悪いとか考えてて、答辞を読む間ずっと紙を持つ手が震えていた。

 無事に終わって、よかったあ。


「さすがだな、梶原」

 用意されていた席に戻ると、隣に座っていた高尾先生が拍手しながら迎えてくれた。

「伊達に学年トップを維持してたわけじゃないな。いや、堂々としたもんだ。お前を選んだ俺の目に狂いはなかった」

 高尾先生は学校の主任で、卒業式の担当者だ。
 こういうのって普通、生徒会の会長とかがやるんだろうけれど、肝心の会長が卒業式を目前に国外逃亡、いや、留学をしてしまったので、1年間学年トップの座を譲らなかった私にお鉢が回ってきたのだ。