上坂は、受験をしなかった。

 高校を卒業したらそのままケンジさんの手掛けるプロダクションに就職して、メイクアップアーティストを目指すんだそうだ。まだお父様には承諾をもらってなかったけれど、上坂はもう家を飛び出すことなく、根気よく説得を続けている。お母様と、意外にも松井さんは、上坂の味方らしい。


 そんな上坂は、あいかわらず学校ではみんなの人気者だった。でも、女子と遊びに行くことはなくなった。遊びに行くのも登下校を一緒にするのも、相手は私だけ、になった。青石さんが暴露してくれた賭けの話を聞いていたはずのクラスメイトは、ただ、私たちを静観しているだけだった。青石さんも、私たちを遠巻きに見ているだけで、もう声をかけてくることはなかった。