それからも、私は上坂のお弁当を作り続けた。

『胃袋つかむのは効果的……と』

 そう真面目な顔でつぶやいた冴子は、うちに来て私や莉奈さんと一緒に料理をするようになった。こころもち小早川先生が太ってきたのは、それと無関係ではないだろう。


 時々、上坂とは出かけたりした。上坂はいつでも優しかったけれど、私に触れることは一切しなかった。だから断じて、デートなんかではない。あくまでも受験勉強の息抜きとして、映画を見に行ったり遊園地に行ったり。予備校や模試の帰り、遅くなるときは必ず家まで送ってくれた。岡崎さんと上坂は本当に仲がいいみたいで、よく三人で話すこともあった。たまには、上坂と一緒に勉強したりもした。私のわからないことを上坂が教えてくれることもあって……この人、本当は、私より頭いいんじゃないかと思って少しばかり落ち込んだのは内緒だ。