あの月が丸くなるまで

 だから、おしゃれになんの興味を示さないことで、彼を違う世界の人間だと思い込もうとした。自分には似合うことのない、関係のない男子だと、思い込もうとした。

 本当は、ずっとずっと、好きなままだったのに。

 そうやって、この想いを胸に秘めたまま、卒業するものだと思っていた。のに。


 莉奈さんは、穏やかな目をして言った。

「好きだから、彼のこと守ったのね」

「でも、あいつ、かっこいいしもてるし……そんな人と私なんて、釣り合わないじゃない。だからあいつにつきあってって言われた時も、一度くらいつきあってみたら高校時代のいい思い出になるかな、って打算があった。どうせ私なんて、つまんない人間だってすぐにわかってフラれるだろうし、私だって」

「どうせとかつまんないとか、自分のことそんな風に言うな」

 ふいに、拓兄が口をはさんだ。