あの月が丸くなるまで

「拓兄ちゃん……?」

「いや、気にすんな。おい、お前」

「上坂です」

「お前なんかお前で十分だ。もしお前が本気なら……美希を泣かすようなうかつなこと、絶対にするな」

「わかりました。約束します」

 真面目な顔で拓兄ちゃんに言うと、上坂はぱんぱんとズボンの土を払った。


「というわけで、美希。もう一ヶ月延長な」

「いつからそんなルールが導入されたのよ」

「俺はスペックが高いので、どんな状況にも臨機応変に対応できます。それとさ」

「なに?」

「今度は、俺のこと、名前で呼んでよ」

「なんで?」