あの月が丸くなるまで

「美希」

「私はいいの。だから、もうやめて。お願い。もう、いいの」

「お前……」

 必死にその腕につかまる私を、お兄ちゃんは複雑な顔で見ていた。そして、不機嫌そうな顔で上坂を振り返る。


「たとえ美希がやめろと言っても、お前が美希を不幸にするなら、俺は全力でお前を叩きつぶしてやる」

 鋭く言い切った拓兄ちゃんに、上坂は目を丸くした。

「美希、愛されてんなあ」

「ふざけんな」

 睨みつける拓兄ちゃんを気にすることなく、上坂は私に向かって笑った。

「でも、俺も気持ちは負けてないから。絶対にお前を、つかまえてやる。よろしく、お兄さん」

「お前に……!」

 何か言いかけた拓兄ちゃんは、ふいに言葉を止めるとめちゃくちゃ渋い顔になって頭を抱え込んだ。