あの月が丸くなるまで

「いい加減な気持ちで、俺の妹に手を出すな。今度こんなことしたら、蹴飛ばすだけじゃすまねえぞ」

 上坂はなんとか立ち上がると、拓兄に軽く頭を下げた。

「すみません。二度と美希さんの嫌がることはしません。でも……嫌がらないのなら、いいでしょ?」

「なに?」

 顔をあげた上坂は、私の方をまっすぐに見て言った。

「美希。言ったろ? 俺、本気でお前のこと好きだから。あきらめないよ、お前のこと」

「お前……!」

「拓……お兄ちゃん!」

 ベンチを超えて飛びかかろうとした拓兄ちゃんを、とっさに立ち上がって抱きとめた。驚いたような顔で、拓兄ちゃんが振り返った。