あの月が丸くなるまで

「私の携帯、充電きれちゃってたの」

「そう? それならよかった。なんともない?」

「私は大丈夫だけど……」

 私は視線を上坂に戻す。

 上坂は、上半身だけ起こしてお腹を押さえている。拓兄の蹴りが、見事に横っ腹に決まったらしい。


「美希は嫌がっていたようだけど?」

 座った目で見下ろすその顔は……拓兄、怒ってる?

 こっそりと莉奈さんの耳元に話しかける。

「莉奈さん、拓兄……」

「もうね。美希ちゃんに連絡とれないってわかってから、心配でずっとそわそわしてて。公園に入った時にちょうど美希ちゃんの悲鳴が聞こえて、それでキレちゃったみたい。私、こんなに怒った拓巳、初めて見るわ」

「私も……久しぶりだよ」

 私たちの方を振り向かないまま、拓兄の静かな声が響く。