あの月が丸くなるまで

 ベンチに押し倒されたような格好になってしまった私は、じたばたと起き上がろうとする。けれど、押さえつけている上坂の力が強くて……動けない。


「や……やだっ! 離して!!」

「お前の手なら、こんなに簡単につかめるのにな」

「え……?」

 しみじみとした低い声は穏やかで、狂気に駆られているようには聞こえなかった。少しだけ落ち着いて、私は上坂の顔を見上げる。

 上坂は、困ったように笑んでいた。


「好きになった女は、今までたくさんいた。でも、別れたくないと……離したくないと思ったのは、美希が初めてだ。圭とのツーショット見た時は、あやうくスマホ投げそうになった」

「み、見たの?! あれ?!」