あの月が丸くなるまで

「これ以上、知らないところで馬鹿にされるのはまっぴら。もう私に構わないで」

「やっぱり、俺の言うこと、信じられない?」

「信じられるわけないでしょ? さぞ面白かったでしょうね。いいようにふりまわされて毎日お弁当まで作って……私じゃなくたって、それで喜ぶ女子なんて他にいっぱいいるじゃない」

「俺は、美希がいい」

 言いながら、上坂が私の手を、ぎゅ、と握った。

「遊びなら、確かにもっと楽に付き合える女はたくさんいる。けど……美希のことは遊びにしたくない。この一ヶ月。一緒にいて、俺のこと、全然好きにならなかった? それとも、少しは、好きになってくれた?」

「私は……」

 つかまれた手が、熱い。真剣に見つめてくる上坂の瞳が……怖い。

 私は、その眼を見ていられなくて、視線をそらした。