あの月が丸くなるまで

「……何言ってんの?」

「楽しいことしようって、言ってんの♪」

「ばかじゃないの? 第一、私まだあんたのこと何も知らないし……」

「だから、知ってもらうんでしょ?」

 ふいに、上坂がぐい、と私の肩を引いて抱き寄せた。近づけた瞳が、細く微笑む。




「俺のこと教えてやるからさ、美希のことも教えてよ。隅から隅まで、全部」

「ふ……」

「ふ?」

「ふざけないで!」

 私は、思い切り上坂を突き飛ばした。予想していたのか、上坂は姿勢も崩さずにひょいと離れる。

「ふざけてないって。俺は、本気だよ?」

「デートの初日にホテルに誘うような奴の本気なんて、信じられるものですか!」

「えー? そんなに構えなくてもいいじゃない。もう高校三年なんだしさ。お互いを知るには一番手っ取り早い方法だと思うんだけど。あ、もしかして美希って、処女?」

「……っ!」

 思い切りバカと叫ぼうと息を吸い込んだ瞬間、間の抜けた音楽が私たちの間で鳴った。