あの月が丸くなるまで

「ちゃんと、仕事内容とか、就職についてとか、今までのこともきっちりと話した。俺がそこまで真剣に考えているとは思っていなかったみたいで、ずいぶん驚いてたけど、ずっと黙って聞いていてくれて、最後に『本気でやってみたいなら、いいんじゃないの』って」

「認めてもらえたのかな?」

「どうかな。でも、思っていることは全部話せた。親父に話すときの、いい予行練習になったよ」

 そう言って上坂は、少し、笑った。


「そういえば美希、こないだ家に来た時、母さんに会ったんだって? 忘れていたことを、美希が思い出させてくれたって言ってたけど、なんのこと? 笑ってごまかすだけで、何の話か教えてくれなかったんだけど」

「……上坂が学校ではどうだとか、そんなこと。あ、あのおにぎり、お母様にも作ってあげたんだね。喜んでたよ」