あの月が丸くなるまで

「スマホの電源入れたら、メールの未読三桁いってた」

「一週間分だもんね」

「めんどくさいから、全部消去しちゃったよ。ラインも美希のだけ読んだけど、連絡しなくてごめん」

「理由はわかったからいいわ」

 ……ということは、岡崎さんのアレは見てないってことだよね。うん、別に悪いことしてたわけじゃないんだけど、ないんだけど。


「ケンジさんとこにいる時にさ、スマホないと誰とも連絡とれないんだなって、今さら思ったよ。人の電話番号とか、憶えてないもん。せいぜい覚えてたの、自宅の家電だけだった。俺、美希の携帯番号くらいは暗記しとこ」

 笑いながら話す上坂に、私はただ笑みを返しただけだった。