あの月が丸くなるまで

「なんで私がそんな顔」

「ゆるみまくってるよ。ごちそうさま」

「……」

 そんなつもりはないんだけど。

 これから上坂に会える、ってだけでこんなに浮かれるなんて、ちょっと認めたくない。



 昨日のことを思い出すと、また頬が熱くなる。気を静めるために、私は一度大きく息を吐きだした。

 そろそろ、私も自分の気持ちに向き合わなければいけないのかな。上坂に偉そうなこと言っておいて、私だって、ずっとごまかし続けてきたことがある。

 上坂は知らない。私の、本当。

「初々しいこと」

 からかうように冴子に指摘されても、その自覚はあるので反論ができない。私が黙ってカバンを手にした時だった。

「ちょっと、いいかしら」

 背後からかかった冷たい声。誰だかなんてすぐにわかる。私はゆっくりと振り向いた。