あの月が丸くなるまで

車にもたれて煙草を吸っていた松井さんが、落ち着いた様子で私を見ていた。

「首尾よく、届け物はできたようですね」

「松井さん?! は、早いですね。まだ、一時間たってませんよ?」

「時間通りに行動する秘書は二流です。あらかじめ先を予測して先回りができなければ、国会議員の第一秘書なんて務まりません」

「予測……?」

 吸っていた煙草を簡易灰皿にもみ消すと、松井さんは車の後ろのドアを開けてくれた。

「例えば、あなたが一時間も経たずに美容室から赤い顔で飛び出してくるだろう、などですね。あなたが単純な方で助かりました。面白いほどに、予想通りです」

「はあ……」

 言い返すだけの余裕も気力もなく、私はおとなしく車へと乗り込んだ。


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