あの月が丸くなるまで

 目を細めて、その顔が近づいてくる。その仕草に操られるように、私もゆっくりと目を閉じ

「蓮―! 美希ちゃん来て……おっと……」

 ようとした瞬間、持っていたドアノブが勢いよく引かれて体勢が崩れた。振り向くと、目を丸くしたケンジさんが立っている。

「あらあ……」

「失礼しますっ!!」

 その横を急いで走り抜ける。後ろを振り返ることなく、私は店を飛び出した。



 いやいやいやいやいや! 何、今の?! 何しようとしたの、私?!

 熱くなった頬を両手で押さえながら、道端でぜいぜいと息を吐く。心臓がありえない勢いでばくばくしていた。

 信じられない。私、なんてことを……あと、三センチ。ケンジさんがくるのが、もう少し遅かったら、私……

「お疲れ様でした」

 ふいに声をかけられて、ぎょっとして顔をあげる。