あの月が丸くなるまで

「美希はかわいいって。もっと自信持てよ。……そのワンピース、やっぱりかわいい。足きれいだから、そういう靴も似合うな」

 お世辞とはわかっていても、頬が熱くなる。うつむいた視界に、自分の腕時計が映った。約束の時間にはまだ早かったけど、なんとなく居心地悪くなって私は立ち上がる。


「もう、帰らなきゃ」

「まだいいじゃん。帰り、送るよ?」

「ううん、もう少ししたら、松井さんが迎えに来るの。ここまで車で送ってくれたのよ」

「で、俺を連れて来いって?」

 少しばかり嫌味を含んだ口調で、上坂が言った。私は、首をかしげる。

「私もそうなのかと思ったけど、松井さん、連れ戻せとは言わなかったのよね。ただ、話してこいって言っただけで……でも、一緒に帰る?」

 小早川先生も、話を聞いてあげて欲しいみたいなことは言ってたなあ。

 誘う私に、上坂は少し考えるように視線を落とした。