あの月が丸くなるまで

「親父なんて、素直に俺の話を聞くような人間じゃないよ」

「聞かせるのよ。ここで上坂が身に着けた知識や技術を、ご両親はまだ知らないわけでしょ? だから、レポートの一つだと思って準備してみれば? 題して『メイクアップアーティストを職業とした場合の上坂蓮に関しての一考察』」

 身を乗り出して話す私に、上坂はぱちくりと目を丸くした後、屈託なく笑った。



「なるほど。現在、俺と親の間には、メイクアップアーティストに関する意識の相違が生じているわけだ」

「そうよ。その無駄に賢い頭を、存分に発揮するときよ。がんばって」

「そっか。……やっぱ美希って、頭いいな」

「だてに学年一番はとってないわよ。それだけが取り柄だからね、私」

「それこそ、何言ってんだよ」

 ぎ、といすを鳴らして立ち上がると、私の目の前に立って上坂が私をのぞきこんだ。