あの月が丸くなるまで

「誰も、知らない。ここに知り合いを連れてきたのは、美希が初めてだよ」

「……じゃあ、なんで私なんて連れてきたの?」

 てっきり、歴代の彼女たちをここで飾り立てていたのかと思ってた。

 上坂は笑んだまま、それには答えなかった。

「話を戻すけどさ。……ここでメイクの勉強を始めた時は、面白そう、と思うくらいで、まだヘアメイクなんて漠然とした夢だった。けど、だんだん自分にできることが増えるにつれて、夢ではなくて現実にできるかも、と思い始めたら、それを選べないことが苦しくなってきて……一番なりたいものになれないなら、あとは何でも同じだと思っていた。親父の言う通り、大学に行って議員になって……って、そんな風に生きていくんだと、ずっと思ってた。けど、美希と付き合い始めてから、その考え方が少しずつ変わってきた」

「そうなの?」