あの月が丸くなるまで

「男のくせに、ってバカにできたのは、最初だけ。その手でみるみる母さんが変わっていくのを見て、俺は言葉が出なかった。派手な色を付けるわけじゃない、なのに、確かにその手で人が変わっていく……美容師ってこんなことができるんだって、すげえ感動した。ちょうどケンジさんが独立してここに店を開いたころだったんで、俺は頼み込んで無理やり弟子入りさせてもらって、こっそりとヘアメイクの基本を教わり始めたんだ」

「え? なら、高校になってから、ずっと……?」

「うん。ここで、雑用みたいなバイトをしながら、少しづつ勉強を重ねてきた。親にも友達にも、誰にも言ったことがないから、俺がこんなことしてるの知ってるのは、ここ……『アダマース』の関係者だけだ」

 じゃあ、渋谷でよく見かけるって……遊び歩いているんじゃなくて、ここに通っていたのを見られてたんだ。

 ん?

「友達……にも?」

 私は首をかしげると、上坂が、ふ、と微笑んだ。