あの月が丸くなるまで

 私が言うと、その人はくすくすと笑い始めた。

「そう? あのコ今、半分死にそうな顔でいるけどね」

「え?」

 どういうことだろう。

 中途半端に伸ばしたスマホを持った手を、どうしたらいいかわからず戻そうとした時だった。


「美希!?」

 呼ばれた方を反射的に見上げると、階段の上から上坂が覗き込んでいた。

「ホントに美希? うわ、どうしたの? なんでここにいるの?」

 階段を二段跳びで、上坂が満面の笑みを浮かべながら飛び降りてくる。

 その姿は……見えない尻尾をぶんぶんと振る子犬みたい。私と話していた女性が、蓮うるさい、と注意したけど、気にすることもなく上坂はまっすぐに私に向かってきた。