あの月が丸くなるまで

「いらっしゃい。蓮を連れ戻しにきたの?」

 にっこりと女性はきれいな笑顔をつくる。

「いえ……」

 そういえば、松井さんは話をしてみろ、って言っただけだ。連れ戻せとは言われてない。


上坂に、届け物があってきました」

「宿題のプリントかしら。だったら、渡しておくけれど?」

 口元だけでその人は笑う。なんか……子供扱いされて、少し、む、とした。

「これ、上坂に渡しておいてください」

 私は、持っていたバッグからスマホを取り出すと、その女性にずいと突き出す。と、その人は目を丸くした。

「蓮に会いに来たんじゃないの?」

「連絡がとれないから、死んだかと思って一応心配してただけです。とりあえず生きてることがわかればそれでいいです」