あの月が丸くなるまで

 運転席の松井さんを振り返ると、彼はにっこりと笑った。

「はい。私と顔を合わせると、蓮様はたいてい不機嫌になりますので」

「私が行っても同じなんじゃ……」

「蓮様は、女好きですから」

 身もふたもないことを言って、松井さんは私を車から追い出す。仕方なく私は、重いガラスの扉をあけた。


「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」

 私の姿を見つけると、受付の若いお姉さんが笑顔で近づいてきた。今日はケンジさんの姿は見えない。

「いえ、こちらに上坂蓮がいると聞いたのですが……」

 お姉さんは、目を丸くする。

「あなたは?」

「梶原、と申します」

 そのお姉さんは、困ったような顔をして、誰かを探すようにきょろきょろし始めた。