あの月が丸くなるまで

「かわいいでしょ。この夏の新作なんですって」

「でもこれ私が履いてっちゃったら、莉奈さんどうやって帰るの?」

「サンダルでもなんでもいいわよ。どうせすぐそこだし」

 莉奈さんは、お向かいで一人暮らしをしている。最近はもう、どっちが莉奈さんの家だかわからないくらい、うちにいるけど。

 私は、じ、と細いストラップのその靴を見つめた。


「……借りていい?」

「もちろん。気をつけて行ってらっしゃい」

「ホントに、男じゃないのか?」

 拓兄が、心配そうな顔で聞いて来る。

「会いに行くのは男だけど、拓兄が心配するような人じゃないから」

 靴下を脱いでミュールを履きながら、私は何気ない調子で言った。あ、これ足に馴染む。あんまりかかとが高くないから、履き慣れてない私でも大丈夫そう。