あの月が丸くなるまで

 ☆


「こんな時間にどこ行くんだよ」

 玄関へ向かおうと階段を下りていくと、私に気づいた拓兄がキッチンから顔を出した。その後ろには莉奈さんもいる。


「あら、美希ちゃん、デート?」

「ううん、友達に会いにいくだけ」

「の割には、服装に気合が入っている……」

 探るような拓兄の視線を無視して、私はキッチンの前を通り過ぎる。

「美希ちゃん、そのワンピースなら、こっち、履いていきなさいよ」

 いつものローファーをはこうとしたら、莉奈さんが、自分のミュールを指さした。莉奈さんは、背は高いけど足は私と同じサイズだから、以前はよく私のスニーカーなんかを借りていくことがあった。けど、私が莉奈さんの靴を借りたことはない。だって、可愛い靴が多いから、私には似合わない。