あの月が丸くなるまで

「連絡がないことは、ご心配なさらず」

 私の顔色を読んだのか、松井さんは内ポケットからスマホを取り出した。


「これを、蓮様に渡してください」

「これは?」

「蓮様の携帯です」

 確かに上坂のものと同じだけど、新品らしくとてもきれいなものだった。

「先週、先生と喧嘩した折、蓮様の携帯は先生に壊されてしまいました。これは新しいものですが、変更手続きは済んでおります。あなたから蓮様にお渡しください」

「私が渡していいんですか?」

 私が顔を上げると、少しだけ松井さんは笑みを浮かべた。

「蓮様を、よろしくお願いいたします」

 私は、そのスマホを、じ、と眺める。

 連絡をくれなかったんじゃない。連絡することができなかったんだ。

 なら……少しだけ、期待してもいいかな。