あの月が丸くなるまで

「何かの課題?」

 私の読んでいたのは、歴史書だった。

「ううん、違う。先週の日本史の授業、細かいとこまで伊藤先生がやらなかったから、いくつか疑問が残って」

「ああ、鎌倉時代から室町に入るとこでしょ? うちのクラスもそうだった。なに、中間考査に出そう?」

「そういうわけじゃないけど……私が気になっただけ」

「じゃ、いいじゃん、テストに出ないんだったら、テキトーにやっときゃ」

「気になったら、ちゃんと押さえとかないと落ち着かないのよ」

「ふーん。俺、そういうめんどくさいのパス」

「あんたにも同じことやれとは言わないわよ」

 よくこんなんで、学年十位なんて入ってるわね、この人。

「俺もなにか読もっと」

 独り言のように言って、がたりと上坂は席を立った。そうして雑誌のコーナーへ向かい、ファッション雑誌を数冊持ってきて、また私の前に座る。

 しばらくは、二人とも黙って自分の作業に没頭する。