あの月が丸くなるまで

「ええ。失敗したから、なんて言いながら、私に一つ、花村さん……うちのお手伝いさんに一つ。とても、おいしかったわ」

「はい」

 ぎゅうぎゅうに握られたおにぎりを思い出す。私と同じように、お母様も、一言いいながら食べたのかな。それとも、何も言わずに、今みたいに穏やかに微笑んで食べたのかな。



「梶原さん」

 松井さんが、相変わらず淡々とした声で言った。

「これから蓮様のところへお連れ致します」

「えっ?!」

「どうか、蓮様の話を聞いてさしあげてください」

「でも……」

 連絡もなにもない。私はすでに上坂にとって必要のない人間なんじゃないだろうか。そんな不安を抱えた私がのこのこと上坂の前に出て行っても、上坂が喜んでくれるとは思えない。