あの月が丸くなるまで

「美容師と、違うのかしら」

「まあ、似たようなものです。細かいことを言えば、いろいろとありますが」

「そうなの。私、あまりそういうことには、詳しくないから」

 恥じ入るように、お母様は頬を染めた。それから、もう一度、私に向かう。


「先週のことです。突然蓮が美容師……いえ、メイクアップアーティスト? ……になりたいと言い出しましたの。最初は夫も相手にしなかったんですけれど、今までになく蓮が食い下がったものですから夫はそれはもう怒って、蓮と大喧嘩になってしまって……次の日に家を出たまま、あの子、この家には戻ってはおりません」

「家出、してたんですか」

「連絡もないし、一体あの子、どこにいるのか……」

「蓮様は、懇意になさっている美容師さんのもとにいらっしゃいます」

 私とお母様は、二人で同時に松井さんを見た。