あの月が丸くなるまで

  ☆


「……美希サン」

「何?」

「これ……デート?」

「そうですけど?」

 人差し指を唇の前に立てて、私は上坂に静寂を促す。

「図書館ではお静かに」

「ああ……こんなとこじゃいちゃいちゃとかべたべたとか……無理……」

「なんか言った?」

「いえ、何も」

 私は、なにやら魂抜けたような顔をしている上坂をほっといて、また手元の本に視線を落とした。



 私たちは、地元の市立図書館でテーブルを挟んで向かい合っていた。

 予約しておいた本が用意されているというので、今日はそれを取りに来たのだ。その中の一冊が貸出禁止の資料で持ち帰ることができなかったため、館内で読んでしまわなければならない。本とノートを広げる私を眺めながら、上坂が前の席から声をひそめて聞いた。