あの月が丸くなるまで

  ☆


「ここ……かな」

 途中で路線を乗り換えて、一時間ほど電車に揺られたところで私は目的の駅についた。

 高級住宅街と呼ばれる地域の一角に、その家はあった。立派な表札には流麗な文字で『上坂』と書いてあるから、ここなんだろうけど……

 見上げるその家は、周りの家と比べても一回りほど広々とした見事な豪邸だった。門からこっそりとのぞいてみるけど、中に人の気配はない。


 どうしよう。

 ここまで来てはみたけれど、さて、こんにちは、とお邪魔するのもなにか変な……あ、それに私、人んちにくるのに手ぶらだ。

 もう一度上坂に電話してみるも、相変わらず電源は入っていない。

 出直そうかな……

 弱気になった時だった。いきなり、門がひとりでに開き始める。