あの月が丸くなるまで

「今回のことがそのことと関係があるかどうかはわからないけれど……もし梶原さんが彼の心の声を聞くことのできる人なら、話をきいてあげて欲しい。彼には、そういう人が、きっと必要なんだ」

 そう言って先生は、机の上の書類をごそごそと探り始めた。

「もちろん僕もそのつもりではいるよ。でも、教師という立場じゃ心を開いてくれるまでまだ時間がかかりそうだし……あ、あったあった」

 抜き出してきた書類から、先生は何かをメモに書き写す。


「はい、上坂くんの住所。彼を、よろしく。それで、なにかわかったら、こっそり僕にも教えてくれるかな。絶対に、他言しないから」

「はい。ありがとうございます」

「これから行くの? 私も一緒に行こうか?」

「ううん、とりあえず、一人で行ってみる」

 私は、その小さな紙を握りしめた。

 上坂に会えたら……何を、言えばいいんだろう。