あの月が丸くなるまで

「残念。ね、明日明後日は暇?」

「明日は予備校。明後日は本、読んでる」

 ふふ、と上坂が笑った。微かな月の光に照らされたその笑顔は、昼間の学校で見る笑顔と違って、やけに妖艶に見えた。

「週末は天気いいんだって。だから明後日の日曜日、デートしようよ」

「ずいぶん急なお誘いね」

「今のところ一ヶ月しか時間がないんだから、そりゃ、急ぐって」

「……わかった」

「やりい♪ じゃ、明後日迎えに来る。またね」

「送ってくれて、ありがと」

 上坂は、ひらひら長い指を振りながら、来た道を軽やかに戻っていった。月明かりに照らされたその後ろ姿が角を曲がって見えなくなるまで、私はその背中を見送っていた。