あの月が丸くなるまで

「上坂君か」

 英語研究室に行くと、小早川先生は机で何やら仕事をしていた。もう一人いる英語教師、青山先生はもう帰ったということでいなかった。

「連絡が取れないので、直接お家へ行ってみたいんです。住所、教えてください」

 さくさくと冴子が話を進めてくれる。

「住所教えるのはいいんだけど」

 もちろん内緒だよ、と一言添えてから、小早川先生は眉をひそめた。


「もしかしたら、お邪魔しても家にはいないかもしれない」

「「え?」」

「いや、ね。先週の火曜日に上坂君本人から、今日は休みます、って電話をもらったんだ。でも次の日は何の連絡もなく学校に来なかったから、家の方に連絡してみた。そしたらお母さんが出て、家の都合でしばらく休ませますと言われたんだ。なんとなくその話し方がしどろもどろで、様子がおかしくて。あれから二回ほど電話してみたけど、出るのはお手伝いさんで、上坂君はおろかご両親も電話口に出てくれない。お母さんは彼が休んでいることわかっているようだったから、何か理由があるみたいだね」