あの月が丸くなるまで

「どうでしょう。そんなことに労力をかけるくらいなら、過去問の一つも解いていた方が有意義だとは思います」

「ドライだね。……じゃなくて、放り出せなくなるのは、きっと俺の方だよ」

 意味がつかめずに、じ、と岡崎さんを見る。彼は、くく、と笑った。


「美希ちゃん、スマホ持ってる?」

「りんごですけど」

「ちょっと貸して」

 私が携帯を渡すと、岡崎さんは何やら操作した。と、岡崎さんのスマホが鳴る。

「美希ちゃんの番号ゲット。俺の番号も登録しとくね」

「勝手に何やってんですか」

「蓮のことで何かわかったら連絡するからさ」

 屈託なく笑うその顔に、上坂の顔が重なった。岡崎さんの言う通り、仲いいんだろうな。すごく雰囲気が似てる。

 でも、この人は上坂じゃない。

 結局それから一時間しても、岡崎さんのメッセージは既読にはならなかった。