あの月が丸くなるまで

「そうなんですか?」

「うん。俺んち、爺ちゃん世代からずっと、上坂家の主治医みたいことやってんだよね。だから、蓮が病気やけがをしたってんなら、まず俺が知らないってことはないと思う。多分、姿を見せないのは蓮の意思じゃないかな」

 無事、という言葉に、少しだけ安堵を覚える。


「それなら……やっぱり上坂は、もう別の女を見つけて、私のことなんか思い出しもしないんですよ」

「そう思い込んで、あんなに落ち込んでたんだ」

「落ち込んでなんて……」

 岡崎さんは、自分のスマホを取り出すと何やら打ち始めた。

「もともと蓮って、すぐに返信が返ってくるようなやつじゃないんだよ。ラインしても、既読になるのが次の日とか、しょっちゅう。それでも、さすがに一週間無視されるなんてことはなかったなあ」

 ふと思いついたように顔をあげると、岡崎さんは席を立って私のとなりに並んだ。 

 え?