あの月が丸くなるまで

 ああ、やっぱりこの人も上坂と同じ人種なのね。本人はともかく、そういうのって相手はどう思っているんだろう。フった方とフラれる方、どっちが傷つくのかな。

 そこで、ふと、気付いた。


「もしかして、怖いんですか?」

「……何が」

「Sな趣味はありませんので、それ以上は控えます。生意気言ってすみません」

「美希ちゃん、なにか怒っている?」

「八つ当たりです。気にしないでください」

 ついつい、連絡のない上坂に岡崎さんを重ねてしまった。



 しばらく黙っていた歩いていた岡崎さんは、ふいに、私の肩に手を回してきた。

「きっと蓮だって、今頃どこかで別のオンナと遊んでいるかもしれないよ? だからさ、こっちはこっちで……」

 仰ぎ見た私の顔に、岡崎さんの影が落ちた。端正な顔が近づいて……



 ぱしっ。



 気持ちいいほどきれいに、平手が入った。あたりを歩いていた人がみんな振り返ったけど、悪いのは岡崎さんだ。