あの月が丸くなるまで

 連絡……してみようかな。でも、用がなくて私に連絡してないんだとしたら、『何?』とか言われたら話が続かない……


 そんな風に悩んでいる自分がおかしくて、ついつい苦笑する。

 ホントに、何やってるんだろう。あんなやつ、放っておけばいいのよ。

 でも……

「憂い顔も綺麗だね」

 ふいに声をかけられて顔を上げると、岡崎さんだった。



 同じ国立医大系の岡崎さんとは講習がほぼ重なっていて、改めて見てみれば、いつも同じ教室にいた。どうりで、見たことがあるはずだ。

「お疲れ様、美希ちゃん。そんなに今日の講義って難しかった?」

「むしろ、文法は、今までの疑問が解決して安心しました」

「じゃあ、恋の悩み? だったら俺、よろこんで講師やるけど」

「謹んでお断りいたします」

 笑う岡崎さんに構わず、私は帰り支度を続ける。