あの月が丸くなるまで

「受験に落ちたってせいぜい浪人するだけよ。死にゃしないわ」

 そう言うと、冴子は立ち上がった。

「とりあえず元気そうな顔見たから、帰るね」

「ありがとね。また明日」

 ひらひらと手を振って、冴子は帰っていった。



 私は、いい加減寝てるのも飽きたので、そのまま起きだす。

 上坂が、怒ったんだ。……私のために怒ってくれたんだ。



「あら、美希。起きていいの?」

 キッチンをのぞくと、ママが夕飯を作っていた。今日はシフトを交代してもらったと言って、私と一緒にお昼に帰ってきていたのだ。

「これ以上寝てたら、おしりに根が生えそうよ。リハビリ、リハビリ」

 言いながら私は手を洗って、ママの手伝いを始めた。



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